2019/09/23

LUCCAの話、その2 城壁の上から


はじめてのLUCCAで郊外のレストランでの取材仕事が終わり、駅までもどってきたのは、お昼前でした。すぐにここを発たなくてもいいし、と思い、駅からすぐの、城壁の上に登り、そしてすぐに魅せられました。ちなみに城壁のたたずまいは、この私の出会いから何十年も経っていますが、今も何も変わっていません。
城壁はローマ時代に端を発し、中世に今の姿になったという、古い古いもので、その上は、自転車と人だけが通れる並木道になっています。一周4キロなのでちょうどよい大きさ。散歩の人、ベンチに腰をかけて新聞を読む人、ウォーキングやランニングをする人、自転車で走り抜ける人。それぞれが思い思いにこの城壁の道を楽しんでいます。ルッカの友人の何人かが、リアルに「朝散歩してる」「週末に走ってる」などしっかりこの城壁の道ユーザー。

城壁の内側は「旧市街」とはいえ、商店もバールもレストランも学校もあり、人々の住まいもある、生活の場です。バールも、観光客向けではなく、近所の人が来る普通のバールがメイン。そして、城壁から目を上げれば濃い緑色の低い山なみが少し遠くに。ルッカ郊外(ルッカ市ではなく、ルッカ県)になるのですが、オリーブと葡萄の木が広がっているのです。オリーブオイルもワインも、美味しいものが生まれているこの地方、だからこそ、伝統料理はオリーブオイル主体。伝統料理のトラットリア(カジュアルレストラン)でバターと口走って叱られた話は、この次に。エッセイにも書いた話ですが、このご主人はもう亡くなられたのですが、でもトラットリアは娘さんが切り盛りし、今も変わらぬ料理を出しています。



2019/09/08

私の定番2〜バジリコマリネのせトマトソースパスタ




トマトソースのパスタは、イタリア料理の大定番(?そんな言葉はないけど)で、特に私が定番!と叫ぶものでもないし、バジリコもまた、トマトソースに合わせるのはごくふつう。なんですが、私とっての定番はちょっと変化形、トマトソースのバジリコマリネパスタです。
以前の拙著“幻のヴェネツィア魚食堂(晶文社)にも書いたサルデーニャでの話ですが、この、トマトソースのバジリコマリネ、サルデーニャの某村の村長さんのおくさまが作ってくださったものなのです。日陰をつたって歩かないと暑すぎてとてもじゃない、そんな強烈な陽射しの夏の日のランチ。控えめなバジリコじゃさっぱりしないでしょ、と言って、彼女はたくさんのバジリコを刻んでさっとオリーブオイルをかけたのでした。
それ以来、とくに暑い時にはこのトマトソースが私の定番になりました。暑いといっても日本は、「蒸し暑い」という別の要素(湿度)が加わるので、このトマトソースを登場させるのはなにも「真夏」ばかりではなく、まだ暦では夏じゃないのに今年最高気温!とテレビが騒ぐ5月のある日だったり、猛暑の後ろ姿を見送ったつもりなのに気がついたらしっかり戻っている今日のような日まで、意外に機会が多いのです。
バジリコは金気(かなけ)をきらうから手でちぎって、とイタリア人に昔教わりましたが、さすがにこれは無理。サルデーニャの人も包丁でザクザクと切っていました。私ももちろん包丁で切って、塩をふりオリーブオイルを多めにかけて置いておきます。といっても長い時間ではなく、パスタのお湯をかけてからバジリコを切っているくらいなので、数分。トマトソースもシンプル至極で、ニンニクも使わず、トマトをオリーブオイル少しとバジリコの葉っぱ2,3枚で煮詰めるだけ。このトマトソースで和えたパスタにバジリコマリネをたっぷり。くずしながら食べます。トマトソースの酸味と、バジリコの清涼感。
私はもともとトマトソース好きで、いろいろなトマトソースをしょっちゅう作ってますが、暑い時のベスト1といえる定番です。
redgoldfromeuropejapan
 # waitalian
#ikukokaitani





2019/09/01

地味だけど味があるヤツ、イタリアンに長ネギ。




イタリア料理の、ラグー(ミートソース)に欠かせないのは玉ネギ。肉の煮込みにも、ミネストローネにも玉ネギは欠かせません。玉ネギはイタリアンの「基幹野菜」なのは確かで、もちろんよく使うのですが、私は意外に長ネギもよく使うのです。
「えっ長ネギ使うんですか?」とよく料理教室の参加者さんに聞かれます。
長ネギに似た、「ポロ葱」は、フランス語でポワロー、英語でリーキ、イタリア語ではポッロ。でも似ていると言ってもイタリアではこれを刻んで肉に混ぜるようなことはあまりなく煮崩れしにくいのを利用してスープやオーブン仕上げの料理に使ったりします。
私の長ネギ使いは、
1〜玉ネギの炒めて出てくる強い甘さに、出てきてほしくない時。
2〜ただ刻んだだけで肉にまぜこんだりできる、「水が出ないこと」を利用して時短したい時

のが主なところ。たとえばハンバーグやミートローフも、玉ネギは炒めてさますか、電子レンジにかけてさますか、の手間が必要。その時間もない!という時は長ネギを刻んで、そのまままぜる、というわけです。今日の写真はその写真ではなく、オリーブオイルで長ネギを軽く炒めて、ブラッティーナに合わせたもの。
ブラッティーナは、モッツァレラチーズを成形する時に、モッツァレラチーズの生まれたて(カード)と生クリームを合わせたものを包んだ、クリーミーで贅沢なフレッシュチーズ。柔らかい丸いかたまりの上を十字に切って開くと、とろ〜り。モッツァレラと同じようにトマトとも合うし、青ネギを散らすだけでシンプルにいただいたりもしますが、今回ははじめて長ネギとあわせてみました。
炒めるのに使うオイルはごく少量で、冷たいままの(美味しい)オイルをたっぷり足して、あとは塩だけ。ふんわりしたブラッティーナの風味が、少しだけひきしまる印象でした。

長ネギ、意外にイタリアンに使えるヤツなのです。